熱性けいれん 保護者の不安〜リスクと予後〜

Ana
Ana

熱性けいれんの患児の投薬に行くと、病態について保護者から不安の声がありました。薬の知識しかなかったので、上手に答えれなかったのは反省点です・・・。

薬剤師
薬剤師

実際に子どもの症状を見て、驚くとともに今後について不安になるのは当然ですよね。

本来は、熱性けいれんは基本的に予後の良い疾患なので、過度に不安になる必要はありません。

また、再発したときはどうするべきかを保護者が理解していることが、今後への不安解消にもつながりますよ。

Ana
Ana

なるほど。保護者の不安の解決のためには、病態への理解も必要ですね。

薬剤師
薬剤師

自宅に帰る前に最後に会う医療従事者になることが多いため、知識を深めて保護者の不安に寄り添えたら素敵ですね。

それでは今日は、保護者が熱性けいれんに対する不安として多い、再発時の急性対応、再発、病態の進展について学びましょう。

Ana
Ana

はい、よろしくお願いします!


はじめに

大前提として、熱性けいれんは基本的に予後の良い疾患です。

しかしながら、目の前でわが子がけいれんする姿を見た直後の保護者が不安を抱えることは、ごく自然なことです。

臨床現場では、保護者の不安が強い場合、発熱時に限定してジアゼパム坐薬を使用する方法が選択肢として検討されることがあります。

つまり、再発予防の方針へ影響を与えるほど、「保護者の不安感」は医師の判断基準の1つでもあるのです。

なお、熱性けいれんの再発予防のための対応は、継続的な予防投薬については、熱性けいれんが基本的に良性の疾患であることから、副作用や過剰医療の観点で基本的には推奨されない、というのが現在の考え方です。

すなわち、保護者が疾患についてしっかりと理解していれば、本来は不要な薬物治療を回避することができるのです。

そのためには、まず医療者側が疾患について正確に理解しておくことが重要です。


保護者が抱えやすい不安

保護者が抱えやすい不安の多くは、次の3つのパターンが多い印象です。

  1. 「発作が起きたとき、何をすればいいのか」(急性期対応への不安)
  2. 「また起きるのか」(再発への不安)
  3. 「このままてんかんになってしまうのでは」(てんかん発症への不安)

今回は、この3つの不安に順番に答えられるよう、①発作時の対応、②再発のリスク、③てんかん発症リスクを解説します。


①.発作が起きた、急性期対応

保護者にとって最も知りたいのは、「次に発作が起きたとき、自分は何をすればいいのか」であることが少なくありません。

まずはここから確認しておきます。

以下は家庭でできる、発作時の対応のフローチャートです。

その場でしてほしいこと(子供の体勢をなおし、医師に報告するために記録する)

  • 子どもを安全な場所で横向きに寝かせる (吐いたものが喉に詰まらないようにする)
  • 口の中に指やタオルなどの物を入れない (窒息や肺炎の原因になることも)
  • 発作が始まった時刻を確認し、持続時間を測る (スマートフォンのタイマーなどを活用)
  • 発作の様子を可能であれば動画で記録しておく

救急要請の目安

以下のいずれかに当てはまる場合は、救急要請を検討する必要があります。

  • 発作が5分以上続いている(治療介入を検討すべき時間の目安)
  • 発作が止まったあとも、意識がなかなか戻らない
  • 顔色が不良な場合


②再発リスク

熱性けいれん全体で見ると、再発を経験する子どもはおよそ3割程度です。

裏を返せば、過半数の子どもは生涯を通じて再発を経験しません。

ガイドラインでは、「再発のしやすさに関わる要因(再発予測因子)」として以下の4つが挙げられています。

  1. 熱性けいれんの家族歴(両親・同胞)がある
  2. 発症が生後12か月未満と早い(若年発症)
  3. 発熱に気づいてから短時間(1時間以内)で発作が起きた
  4. 発作時の体温が高くない状態で発作が起きた(非高体温の目安として、39℃以下)

これらの因子を1つも持たない場合の再発率は約15%である一方、いずれかの因子を有すると再発の確率は2倍以上になり、因子を有する症例も含めた全体の再発率は約30%とされています。

3・4番目の因子は、その子どもがもともと「発熱時に発作を起こしやすい体質(発作閾値が低い)」であることを反映していると考えられています。

少しの発熱でもすぐ発作を起こす子どもは、次の発熱でも同様の傾向を示しやすい、というイメージです。


③てんかん発症リスク

熱性けいれんのあとにてんかんを発症する子どもは、約2.0〜7.5%程度とされています。

つまり、熱性けいれんの既往があっても、9割以上の子どもはてんかんを発症しません

ガイドラインでは、てんかん発症関連因子として以下の5つが挙げられています。

  1. 発達の遅れや神経学的な異常がすでにある(発達・神経学的異常)
  2. てんかんの家族歴(両親・同胞)がある
  3. 複雑型熱性けいれんの特徴があった (※以下のいずれか1つ以上に該当)
    • 発作が体の一部に偏っていた(焦点発作)
    • 発作持続が15分以上
    • 同じ発熱の間で何度も発作が起きた(同一発熱機会の反復)
  4. 発熱に気づいてから短時間(1時間以内)で発作が起きた(短時間の発熱-発作間隔
  5. 3歳以降と、やや遅めに熱性けいれんを発症した

これらの因子の重なり方によって、発症率は次のように変化すると報告されています。

因子の該当てんかん発症率の目安
なし約1%
①②③のうち、1個約2%
①②③のうち、2個約10%
①②③すべて満たす約50%
④、⑤相対危険度がおおむね2倍、3倍以上になる

「熱性けいれんを繰り返すうちに、だんだん重い病気に進んでいくのでは」という漠然とした不安を抱えている保護者もいます。

しかし実際には、発熱の有無にかかわらず発作を起こしやすい体質がもともとベースにあり、熱がなくても発作が起きるようになった段階で初めて「てんかん」として扱われる、という考え方が基本です。

つまり、熱性けいれんの再発予防そのものが、てんかん発症を予防するわけではないため、認識を誤らないよう注意が必要です。


「再発予測因子」と「てんかん発症関連因子」の比較

上記2つの要因は混同しやすいポイントのため、整理すると次のようになります。

熱性けいれんの再発予測因子てんかんの発症関連因子
家族歴熱性けいれんの家族歴てんかんの家族歴
年齢12か月未満発症(若いほどリスク)3歳以降発症(遅いほどリスク)
発熱-発作間隔1時間以内に該当1時間以内に該当
その他発作時39℃以下発達・神経学的異常/複雑型


まとめ 保護者の不安への対応

これまでの内容を踏まえ、保護者への説明は次のような内容を伝えると理解しやすくなります。

  1. 大前提を伝える : 「熱性けいれんは基本的に予後の良い病気です」
  2. 急性期対応を伝える : 発作時の体位・時間の測り方・受診 / 救急要請の目安
  3. 数字で見通しを示す : 再発は約3割、てんかん発症は1割未満
  4. リスク因子は「予言」ではなく「目安」と伝える : 因子があっても必ず起きるわけではない

以下は一例です。

「熱性けいれんは、良性の病気で、ほとんどの場合は特に後遺症も残らず、自然に落ち着いていきます。一度経験したお子さんに、また起きる可能性は3割程度と言われていますが、逆に言うと7割のお子さんは今後起きません。もし今後発熱したときにまたけいれんが起きたら、5分以内であれば慌てず時間を測って見ていただいて大丈夫です。5分を超えるようであれば、救急車を呼んでいただいて構いません。」


※なお、この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。

特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。

制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。

法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。

この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。

参考文献

熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 監修 一般社団法人日本小児神経学会/診断と治療社 2023

今日の処方 総編集者 浦部 昌夫、島田 和幸、 川合 眞一/南江堂 2019年、改訂第6版 716-718

F/日経ドラックインフォメーション(日経DIニュース 瀧 千尋 2020.03.P44)

Q21:けいれんを起こした時の注意点は有りますか? – 一般社団法人 日本小児神経学会

Q20:熱性けいれんはどのような病気ですか? – 一般社団法人 日本小児神経学会

日本小児神経学会 保育・療育・教育機関におけるけいれん てんかん児の発作・生活管理 WG 作成 Ver.1

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