脱水酵素阻害薬には経口薬もあるのに、
なぜ継続使用は点眼薬が使用されるのでしょうか。
鋭い指摘ですね、点眼剤と経口剤という剤形の違いによる
特徴の違いが理由になります。
特徴の違い?
それでは今日は、緑内障治療の追加薬として有効な
「炭酸脱水素酵素阻害薬」について学びましょう。
はい、よろしくお願いします!
- 炭酸脱水素酵素の生理作用
- 剤形の違いによる適応の違い
- 個々の薬剤の特徴
概要
炭酸脱水素酵素薬(CAI)は毛様体上皮の炭酸脱水素酵素を阻害して、房水産生を抑制する薬剤です。
緑内障治療の第一選択で使用されるPG関連薬やβ遮断薬とは作用機序が異なり、点眼薬での使用は眼圧降下効果が不十分な時の追加薬として有用です。
炭酸脱水素酵素(CA)は、主に赤血球、腎、眼などに存在し、眼では毛様体に主に存在します。
CAによって房水が作られるメカニズムは以下の通りです。
- 毛様体上皮でCAにより二酸化炭素(CO₂)と水(H₂O)から、重炭酸イオン(HCO₃⁻)と水素イオン(H⁺)が生成する
- HCO₃⁻の後房分泌とともに、ナトリウムイオン(Na⁺)が後房へ輸送される
- Na⁺の濃度勾配により、H₂Oが後房へ移動し、房水が生成が行われる
すなわちCAを阻害することにより、HCO₃⁻の生成が阻害され、結果的に房水生産を抑制し、眼圧が降下するのです。
炭酸脱水素酵素薬(CAI)には、以下に示すように点眼剤が2種類、経口・注射剤は1種類存在します。
内服薬の特徴
内服薬・注射剤のアセタゾラミドは、点眼薬に比べて効果が強いですが、全身的な副作用の強さにも影響します。
そのため継続的な治療目的では使用せず、点眼での眼圧コントロールが困難な症例で、手術までの期間で緊急回避的に使用されます。
全身性の副作用には、しびれ感や温度感覚の異常、低カリウム血症、そして尿管結石の発生などが報告されいます。L-アスパラギン酸カリウム(アスパラカリウム®)などが一緒に処方されることが多いのは、低カリウム血症を予防するためです。
点眼薬の特徴
全身性の副作用は内服薬に比べて少なく長期使用が可能なため、継続的な治療に使用されます。
ドルゾラミド(トルソプト® )は1日3回の製剤です。点眼液がpH5.5~5.9と酸性のため、点眼時の刺激症状があります。CAIは親水性のため眼内移行が良好ではなく、改善のために粘弾剤のヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含有しています。そのため、ベタベタした使用感を感じることがあります。
一方ブリンゾラミド(エイゾプト® )は1日2回の懸濁性製剤で、よく振ってから使用します。 点眼後一過性の霧視があり、運転には注意が必要です。
CAIは毛様体での房水産生に関与するCAⅡを選択的に阻害するため、全身副作用は弱いと言われてます。
参考文献
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黒山 政一 大谷 道輝 違いがわかる!同種・同効薬 2015 , 238-239
伊豆津 宏二 他 今日の治療薬2004.1079