小児における適応外使用の実態

Ana
Ana

小児につかう医薬品は、適応外使用が多いんですよね。

薬剤師
薬剤師

そうですね。

添付文書に小児用量が明記されている医薬品は、全体の30%程度と言われています。

そのため、その他の医薬品を使用することは、適応外使用となりますね。

Ana
Ana

どうして、そのような状況なのでしょうか?

適応外使用は本当に安全なのかも疑問に思います。

薬剤師
薬剤師

状況を理解するためには、小児における臨床試験実施の現状を理解する必要があります。

また、適応外使用は科学的根拠をもとに治療上の有益性があるかが検討された上で行われます。

今日は、小児の適応外使用の現状と、そもそも適応外使用とは?という点を重点的に学んで行きましょう。

Ana
Ana

はい、よろしくお願いします!


1.小児薬物療法の現状

小児も、成人と同じように様々な疾患の治療のために医薬品を使用します。

しかし、小児を対象とした治療で広く使われている医療用医薬品のうち、添付文書に小児の用法・用量が明確に記載されていないものが、全体の60〜70%を占めていると言われています。

これは、治療に適した製剤そのものは存在していても、「小児での使い方(用法・用量)」については承認を受けていない医薬品が多い、ということを意味します。

そのため、臨床現場では、小児への医薬品の適応外使用に出会う場面が少なくありません。


2.なぜ小児の適応外使用は多いのか

上記にあるように、添付文書に小児用量が明記されている医薬品は、全体の30%程度にとどまっているのが現状です。

なぜ、このような状況になっているのでしょうか。

添付文書を確認すると、小児の項目に「小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」と記載されている例が多く見られます。

小児を対象とした臨床試験が実施されていない場合、その医薬品の小児における適応や用法・用量は、添付文書に記載されません

実際、こうした適応外使用が生じる背景には、日本国内における小児対象の臨床試験の遅れが一因として指摘されています。

小児を対象とした臨床試験が難しいとされる理由は、主に次の2点です。

ひとつ目は、症例数を確保しにくい点です。

小児は成人と比べて対象となる患者数が少なく、治験や製造販売後調査で十分なデータ量を集めることが難しいです。

ふたつ目は、年齢による違いへの配慮が必要な点です。

「小児」とは新生児から15歳未満までの幅広い年齢層を指し、成長・発達の段階によって薬の効き方や安全性が異なるため、一律の評価が難しいとされています。

こうした事情から、小児の年齢層別の標準的な用法・用量や安全性が十分に明らかにされないまま、小児用量が承認されないケースが多く生じています。


3.添付文書の「臨床試験未実施」は何を意味するか

添付文書に記載されている「小児対象の臨床試験は実施していない」という一文は、次のように解釈できます。

医師の裁量で医薬品を使用すること自体に、制限はない

一方で、成人と同じレベルで有効性・安全性が確認されていない点は注意が必要です。

(臨床での使用経験が少なく、薬物動態も十分なデータが存在していない)

適切な用法・用量が確立されておらず、使用にあたっては慎重な判断が必要

あくまでも「慎重に使う必要がある」ことを示しています。

使用そのものを一律に禁止する趣旨ではありません。


4.適応外使用のリスク

適応外使用には、知っておくべきリスクがあります。

結論から言うと、有害事象が発生した場合に、公的な救済を受けられない可能性があるという点です。

日本には、医薬品の副作用によって健康被害が生じた場合に医療費等の給付を受けられる「医薬品副作用被害救済制度」があります。

しかし、この制度が対象とするのは「適正な使用」であることが前提であり、適応外使用の場合は対象外と判断されることがあります。

適応外使用を行う際、医師はあらかじめ、その医薬品の小児における安全性について、信頼できるエビデンスをもとに検討したうえで使用を判断します。

それでも、予期しない有害事象が発生してしまうことがあるため、上記のようなリスクを踏まえたうえで治療にあたる必要があります。

こうしたリスクがあるからこそ、適応外使用を行う際には、医師から患児の保護者に対して、薬物治療の内容とあわせてこれらのリスクについても十分に説明したうえで、インフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意)を得ることが欠かせません。


5.適応外使用を適正に行うために

医師は、以上の点を踏まえたうえで、医学論文や医学文献など複数の科学的根拠をもとに、治療上のメリットが得られるかどうかを判断します。

そのうえで、リスク・ベネフィット(治療によって得られる利益と、起こりうる不利益とのバランス)を考慮し、合理的な理由がある場合に、適応外使用という選択肢をとることがあります。

小児の適応外使用は、決して例外的なことではなく、現在の医薬品開発や臨床試験の実情を背景に、日常的に起こり得るものです。

だからこそ、その背景やリスク、添付文書の記載の意味を正しく理解しておくことが、適正な医薬品使用につながります。


6.適応外使用に気づいたときの対応

実習生・新人医療従事者の立場では、「この使い方は添付文書に載っていない」と気づいたときに、まずどう動けばよいか戸惑うことも多いはずです。

現場での立ち回り方として押さえておきたい、対応の流れを確認しましょう。

1)適応外使用と気づく添付文書に未記載という根拠だけで
「使ってよいか・悪いか」を自己判断しない
2)情報源を確認するガイドライン・小児薬用量の資料を参考に
3)一人で判断しない指導薬剤師や、DI業務担当者などに相談
場合によっては処方医に確認をとる
4)使用後の変化に注意する効果や副作用の出方を通常以上に注意深く観察し
気になる変化があれば速やかに報告

「添付文書に記載がない=使えない」と早合点せず、まずはその背景を理解したうえで、疑問があれば必ず確認する姿勢を持つことが、患者さんの安全を守る第一歩になります。

添付文書だけでなく、関連する診療ガイドラインや学会の手引き、小児薬用量に関する参考書籍・データベースなど、参照できる情報源を活用すると良いでしょう。


※なお、この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。

特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。

制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。

法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。

この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。

参考文献

1)編集 原島 知恵 / 南山堂 レシピプラスvol.24 No.1 もう、こわくない!子どもとくすり 2025.1 .26.27

2)江畠 麗 薬局 vol.73 No.7 小児への適応外使用に関する情報を入手する 2022.6 46-49

3)荒木 博陽 / 医薬ジャーナル 小児領域の服薬指導Q&A 2009 190-194

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