熱性けいれんで、ジアゼパム坐剤を安全に使う~投与方法・順番・間隔~

Ana
Ana

ジアゼパム坐剤とアセトアミノフェン坐剤が併用されていました。

順番など、保護者に伝えるべきポイントはありますか?

薬剤師
薬剤師

ジアゼパム坐剤の投与が必要な患児には、基本、1度の発熱に2度投与することになります。

投与の順番によっては効果発現への影響があることが知られています。

今日は、ジアゼパム坐剤にスポットを当てて、しっかり説明ができるように復習しましょう。

Ana
Ana

はい、よろしくお願いします!


はじめに

熱性けいれんの服薬指導では、薬そのものだけでなく、「いつ使うのか」「どの坐剤を先に使うのか」「どのくらい間隔を空けるのか」まで説明する必要があります。

特に、ジアゼパム坐剤とアセトアミノフェン坐剤(解熱鎮痛薬坐剤)が同時に処方されている場合は、坐剤を固める土台となる成分である「基剤」の違いを理解しておくことが重要です。


1.ジアゼパム坐剤の基本的な使い方

再発予防目的のジアゼパム坐剤投与について、服薬指導で押さえておきたい基本事項を整理します。

以下は、ガイドライン上で提示されている投与方法です。

  • 投与のタイミング:体温37.5℃程度を目安に1回目を挿肛(肛門から挿入)する
  • 投与量:1回0.4〜0.5 mg/kg(最大10 mg)
  • 2回目投与:発熱が持続していれば、8時間後に同量を追加
  • 投与期間の目安:最終発作から1〜2年、または4〜5歳までが一つの目安

ただし、投与期間については強いエビデンスがあるわけではなく、あくまで臨床的な目安とされています。

また、2回目の投与時に体温が下がっている場合の対応は、医師によって異なることがあるため、のちほど詳しく紹介します。

日本で使われているジアゼパム坐剤(0.4〜0.5 mg/kg)を8時間間隔で2回投与することで、薬の効果が期待できる血中濃度を初回投与後24時間維持できると考えられています。

熱性けいれんの多くが発熱後24時間以内、または発熱前を含む時間帯に起こりやすいとされています。

この24時間をカバーする投与プランが設定されている、という整理です。

ただし、鎮静やふらつきなどの副反応には注意が必要です。

こうした鎮静によって、髄膜炎や脳炎・脳症といった重篤な疾患との区別(鑑別)が難しくなる可能性がある点も、保護者への説明では意識しておきたいポイントです。

なお、ジアゼパム坐剤の使用目的については、別記事にて記載してますので、参考にしてください。

🔗 熱性けいれんの関連薬


2.ジアゼパム坐剤とアセトアミノフェン坐剤の併用

ジアゼパム坐剤とアセトアミノフェン坐剤を併用する場合、投与する順番と間隔が重要とされています。

基本的な順番は次のとおりです。

  1. ジアゼパム坐剤を先に使用する
  2. 少なくとも30分以上あける
  3. アセトアミノフェン坐剤を使用する

熱が上がってきた段階で、まずジアゼパム坐剤を使用し、その後アセトアミノフェン坐剤を使用する、という形で覚えると整理しやすくなります。


3.なぜ順番が重要なの?

武井研二ほかの報告(日本小児科学会雑誌、100:1347-1355、1996)では、ジアゼパム坐剤を単独で使用した場合と、アセトアミノフェン坐剤を先に使用してからジアゼパム坐剤を使用した場合が比較されています。

結論から言うと、併用時にはジアゼパムの吸収が遅れたり、不十分になったりする可能性がある、という報告です。

具体的には、併用時にジアゼパムの最高血中濃度がおよそ半分程度まで低下したこと、また最高血中濃度に到達するまでの時間も数倍に延長していたことが報告されています。


4.坐剤の基剤から考えてみる

なぜ順番が問題になるのでしょうか。

坐剤の基剤には、大きく分けて油脂性基剤水溶性基剤があります。

この基剤の違いが、坐剤を併用するときの「順番」と「間隔」に関係します。

基剤性質融点の目安放出のしくみ代表的な
医薬品
ハードファット
(油脂性基剤の一種)
油脂性37.0〜39.0℃体温で融解アセトアミノフェン
坐剤
マクロゴール(水溶性基剤の一種)水溶性50.0〜60.0℃水分で溶解ジアゼパム坐剤

つまり、今回のケースでは「アセトアミノフェン坐剤=油脂性基剤」「ジアゼパム=水溶性基剤」という組み合わせです。

≪アセトアミノフェン坐薬を先に投与した場合≫

直腸内では、次のような流れが考えられます。

  1. 油脂性坐剤を先に入れる:体温によって基剤が融解
  2. 油脂性基剤が直腸内に残った状態水溶性坐剤を入れる
  3. 水溶性坐剤が溶ける:直腸内の分泌液(水分)によって溶解
  4. 油脂性基剤との相互作用が生じる水溶性坐剤の主成分の一部が、先に直腸内に残っている油脂性基剤に取り込まれることで、吸収が遅れたり不十分になったりすると考えられています。

水溶性坐剤の主成分の吸収がほぼ終わるまでの時間には、直腸内に貯留している水分量や患者の体温などによって個人差があります。

目安として、少なくとも30分程度(状況によっては60分程度)は必要と考えられています。


5.解熱薬を先に入れてしまったら?

「間違えて解熱薬の坐剤を先に入れてしまいました」

このような相談を受けることもあります。

誤って解熱剤の坐薬を使用した場合は、30分待つ必要はなく、気づいた時点ですぐにジアゼパム坐剤を使用するよう指導するのが基本とされています。

ジアゼパム坐剤の投与目的である、けいれん予防を優先するためです。

※松本 康弘の著書(極める!小児の服薬指導5版.2018年)より


6.「8時間後、熱が下がっていても2回目を入れる?」

服薬指導でよく相談されるのが、 「1回目から8時間経ったけれど、熱が下がっています。それでも2回目を入れるのですか?」 という質問です。

ガイドライン上では、2回目の投与は「発熱が持続していれば」という一文が表記されています。

しかしながら、この点については、熱が下がっていても2回目の挿入を実施すべきと考える医師と、見送ってよいと判断する医師の両方が存在し、統一見解があるわけではないとされています。

投与派の理由の一つとして、解熱薬によって一時的に熱が抑えられているだけの可能性があり、解熱薬の血中濃度が低下した時点で再び発熱することもある、という点が挙げられます。

また、小児は夜間に急に発熱することも多く、その点も考慮する必要があるとされています。

そのため、薬剤師・看護師としては、処方医の意図を確認したうえで説明することが基本です。

自己判断で「入れる」「入れない」を決めないようにしましょう。


7.急性期に使用するジアゼパム坐剤

服薬指導では「入れたあと何を見ておくか」も合わせて伝えると実践的です。

  • 観察のポイント:意識の様子、発作の有無、ふらつき等の副反応
  • 受診・救急要請の目安:けいれんが5分以上続く場合、けいれんを繰り返す場合、呼吸の様子がいつもと違う場合など(具体的な基準は処方医の指示に従うことが基本です)

※このあたりは施設・処方医によって案内内容が異なるため、実際の指導内容は必ず処方医の指示を確認のうえ調整してください。


まとめ

ジアゼパム坐剤の指導では、単に「坐剤を入れてください」と説明するだけではなく、基剤・順番・間隔・投与タイミングまで理解しておくことが大切です。

  • 坐剤には油脂性基剤と水溶性基剤がある
  • ジアゼパム坐剤は37.5℃程度を目安に1回目を使用する
  • 発熱が続いていれば8時間後に2回目を使用する
  • ジアゼパム坐剤とアセトアミノフェン坐剤を併用する場合は、ジアゼパム坐剤を先に使用する
  • アセトアミノフェン坐剤は30分以上あけて使用する
  • アセトアミノフェンを先に使用してしまった場合は、30分待たずにジアゼパム坐剤を使用する
  • 投与後は意識・呼吸の様子などを観察し、必要に応じて受診を検討する
  • 「8時間後に熱が下がっている場合」の対応は医師によって判断が分かれる
  • 判断に迷う場合は、自己判断せず処方医の意図を確認する

※この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。

特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。

制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。

法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。

なお、当ブログでは正確な情報の発信に努めておりますが、内容の完全性・正確性を保証するものではございません。

この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。

参考文献

参考文献

熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 監修 一般社団法人日本小児神経学会/診断と治療社 2023.58-65

今日の処方 総編集者 浦部 昌夫、島田 和幸、 川合 眞一/南江堂 2019年、改訂第6版 716-718

薬局 vol.73 No.7 山本 佳久 「ジアゼパム坐剤の2回目投与のタイミングを指導する」2015.104.105

薬局 vol.73 No.7 山本 佳久 「同時に2種類以上の坐剤を使用するときの注意点を伝える」2015.94-96

極める!小児の服薬指導 松本 康弘/日経BP社 5版.2018年11月 167

Q21:けいれんを起こした時の注意点は有りますか? – 一般社団法人 日本小児神経学会

日本小児神経学会 保育・療育・教育機関におけるけいれん てんかん児の発作・生活管理 WG 作成 Ver.1

日経ドラックインフォメーション 2026.6 松本 康弘 DIクイズ ジアゼパム坐剤をしようするタイミング 23-24

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