
熱性けいれんが起こった後、通院した時には発作が止まっている場合、長時間続いている場合と経過が各々あると思います。
実際、病院へ受診した後はどのような治療を行っているのでしょうか。

より緊急性の高い患児への対応には、発作抑制を目的に静注薬による治療を行う事があるんですよ。
薬局に勤務していては、立ち会うことができない場面ですよね。
今日はガイドラインに記載されているフローチャートを軸に、初期治療について、学んで行きましょう。

はい、よろしくお願いします!
はじめに
熱性けいれんを発症した患児は、救急外来など医療機関へ受診した後はどのような治療を行うのでしょうか。
発作が来院したときには止まっているというケースも少なくありません。
一方で、発作が長時間続いている場合には、より緊急性の高い対応が必要になります。
今回は、実際に発作が起きたとき、あるいは発作直後に患児が来院したときの医療機関の対応について整理します。
以下はガイドラインから引用した、フローチャートです。

1.来院時に発作が止まっている場合、ジアゼパム坐剤は使う?
熱性けいれんを起こして受診した患児が、来院時にはすでに発作が治まっている。
このような場合に、「1日以内にまた発作を起こすかもしれないから、ジアゼパム坐剤を使っておこう」と考えることがあります。
ここで注意したいのは、これまでの記事で扱ってきた「発熱のたびに家庭で使う予防投与」とは異なり、今回は外来での応急処置としての使用について考えている点です。
結論として、来院時に発作が止まっている場合、ルーチンでジアゼパム坐剤を使用する必要はありません。
複数の報告では、外来でのジアゼパム坐剤使用によって、同一発熱機会内の再発が少なくなる傾向が示されています。
一方で、坐剤を使用しなくても再発しない患児も多く、ふらつきによる転倒や、坐剤による眠気によって髄膜炎・急性脳症の症状がマスクされる可能性もあります。
そのため、全例にルーチンで使用する必要はない、というのがガイドラインの立場です。
2.坐剤を使用する場合に確認したいこと
上記で記載したように、来院時に発作が止まっている場合は、ルーチンでジアゼパム坐剤を使用する必要はありません。
しかし、医療機関の体制や自宅から医療機関までの距離などの地域的な事情、家族の不安や心配なども考慮し、投与される場合があります。
坐剤を使用する場合には、中枢神経感染症などを疑う所見がないか確認することが重要です。
たとえば、以下のような所見です。
- 髄膜刺激症状
- 大泉門膨隆(乳児の頭蓋骨のすき間にあたる部分が張っている状態)
- 神経学的異常所見
- 四肢の麻痺
- 眼球偏位
また、意識レベルの低下や神経学的異常所見を、坐剤による鎮静がマスクしてしまう可能性も考慮します。
3.入院・搬送を考慮するタイミング
熱性けいれんにおける入院基準は、施設や地域によって異なります。
ガイドラインでは、以下の5項目が入院、または入院可能な病院への搬送を考慮する目安として挙げられています。
| No. | 目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 発作の遷延 | 発作が5分以上続き、抗てんかん薬の静注を必要とする |
| 2 | 中枢神経感染症の疑い | 髄膜刺激症状、発作後30分以上の意識障害、大泉門膨隆などがある |
| 3 | 全身状態 | 全身状態不良・脱水がある |
| 4 | 発作の反復 | 同一発熱機会に発作を繰り返す |
| 5 | 医師の判断 | 医療機関の体制や地域的な事情、家族の不安や心配なども考慮 |
≪発作後30分以上意識が戻らない場合≫
ある報告では、213回の熱性けいれんのうち、93%の発作では発作後30分未満で意識が回復していたとされています。
そのため発作後30分以上意識が回復しない場合は、熱性けいれん以外の原因(急性脳症など)も考慮し、入院して経過をみることがあります。
ただし、発作後の意識障害の時間を過ぎても、そのまま眠っている患児もいるため、意識レベルを評価することが重要です。
≪全身状態不良・脱水がある場合≫
菌血症などの重症感染症を疑うような全身状態の不良や脱水所見がみられる場合には、血液検査とあわせて入院での治療が考慮されます。
4.発作が5分以上続く場合の初期治療
「熱性けいれんにおいて長時間持続する発作、または複数の発作でその間に脳機能が回復しないものを熱性けいれん重積状態とよぶ」とガイドラインで以下のように定義されています。
けいれん重積状態については、乳幼児では明確なデータが十分ではありません。
そのことを踏まえ、発作が5分以上持続している場合には薬物治療の開始を考慮すべきとされています。
発作を止めるための第一選択の静注薬として、ジアゼパム・ミダゾラム・ロラゼパムの3種類が挙げられています。
| 薬剤 | 参考投与量 | 投与方法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ジアゼパム | 0.3〜0.5 mg/kg | 緩徐に静脈内投与 | 一部報告で過剰な傾眠傾向が 有意に多かった |
| ミダゾラム | 0.15 mg/kg | 1 mg/分の速度で 緩徐に静脈内投与 | 発作消失時間・再発率で 他剤と有意差がなかった |
| ロラゼパム | 0.05 mg/kg (最大4 mg) | 2 mg/分の速度で 緩徐に静脈内投与 | ジアゼパムより 有効性が高い・呼吸抑制が少ない |
※上記の薬剤の特徴については、ガイドラインで紹介された、いずれも異なる報告・研究による報告であり、結果に幅があります。
5.静脈路が確保できない場合の対応
救急外来や搬送前など、静脈路の確保が難しい場合には、静注以外の投与経路も選択肢になります。
日本では2020年12月に、ミダゾラムの口腔投与薬(ブコラム®)が市販されました。
静脈路確保の時間も含めて比較したランダム化比較試験では、発作消失までの時間はミダゾラム口腔投与で2.39分、ジアゼパム静注で2.98分と報告されており、ミダゾラム口腔投与のほうが短かったとされています。
| 薬剤 | 参考投与量 | 投与方法 |
|---|---|---|
| ミダゾラム | 修正在胎52週以上1歳未満:2.5㎎ 1歳以上5歳未満:5㎎ 5歳以上10歳未満:7.5㎎ 10歳以上18歳未満:10㎎ | 頬粘膜投与 |
静脈路が確保できていない小児における発作の治療では、ミダゾラムの口腔投与が有効な選択肢になると考えられます。
まとめ
- 来院時に発作が止まっている場合、ジアゼパム坐剤をルーチンで使用する必要はない
- 坐剤使用時は、中枢神経感染症を疑う所見などを確認する
- 入院・搬送を考慮する目安は5つある
- 発作が5分以上続く場合は薬物治療の開始を考慮する
- 第一選択の静注薬として、ジアゼパム・ミダゾラム・ロラゼパムが挙げられる
- 静脈路が確保できない場合は、ミダゾラムの口腔投与薬も選択肢になる
※この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。
特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。
制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。
法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。
なお、当ブログでは正確な情報の発信に努めておりますが内容の完全性・正確性を保証するものではございません。
この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。
参考文献
熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 監修 一般社団法人日本小児神経学会/診断と治療社 2023.6-7.31-36.38-42
今日の処方 総編集者 浦部 昌夫、島田 和幸、 川合 眞一/南江堂 2019年、改訂第6版 716-718
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