坐剤が途中で出てしまったときの対応

Ana
Ana

患者さんから「坐薬が出てきてしまった。再度1本入れていいの?」と問い合わせがありました。

自信をもって答えれなかったので、結局先輩にフォローしてもらいました・・。

薬剤師
薬剤師

小児の保護者から特に問い合わせが多い内容ですね。

追加投与の判断は、明確な指針がありません。

そのため、その都度リスクを踏まえて検討をする必要があります。

Ana
Ana

そもそも、途中で出なければこんなに大事にならずに済みましたよね。

何か対策はありますか?

薬剤師
薬剤師

途中排出を防ぐためのポイントをしっかり説明できれば、このようなトラブルは回避できますよね。

今日は途中排出の対応について、予防方法を学んで行きましょう。

Ana
Ana

はい、よろしくお願いします!


はじめに

坐剤を使ったとき、「すぐに出てきてしまった」「排便と一緒に出てしまった」という経験は、決して珍しいものではありません。

「坐剤が出てきたら、入れ直していいの?」

服薬指導や保護者からの質問で、答えに迷いやすいテーマの一つです。

答えは「何分経ったか」だけでは決まらず、薬剤の使用目的、排出された坐剤の状態や、薬剤ごとの吸収の速さも関わってきます。

この記事では、途中排出の頻度、再投与の判断ポイント、薬剤ごとの違い、予防の工夫を整理して解説します。


1.坐剤の途中排出はどのくらい起きる?

坐剤の使用では、挿入時や挿入後に困った経験をする人が一定数いることが報告されています。

ある調査では、坐剤の挿入時に困った経験がある患者の割合は40%で、そのうち53%が途中排出を経験していたことが分かっています。

また、挿入から5分以内に排出したケースは、成人で30%、小児で50%と報告されています。

(参考:月刊薬事2022.4臨時増刊号, Vol.64 No.6,  大野能之「坐剤が途中排出してしまったらどうする?」より)

また、ナウゼリン坐剤の製造元による解説では、2.5か月〜15歳までの入院小児患者の母親を対象とした調査が紹介されています。

そこでは、坐剤の挿入時に困った経験があるとの回答が2割程度あり、そのうち約半数が途中排出を経験していたとのことです。

(参考:ナウゼリン | 【公式】協和キリン医療関係者向け情報サイト 協和キリンメディカルサイトより)

坐剤の途中排出は、特に小児への使用を考えるうえで知っておきたいトラブルの一つといえるでしょう。


2.追加投与は「坐剤の使用目的と重要性」、「薬物の吸収程度」で判断

坐剤が途中で出てしまった場合、確認したいのは主に次の2点です。

  • 坐剤の使用目的、副作用、治療への重要性
  • 薬物の吸収がどの程度進んでいるか

これらを踏まえ、薬剤や排出状況に応じて、追加投与しない、1回分を追加する、0.5回分など減量して追加するといった対応を検討します。

≪坐剤の使用目的、副作用、治療への重要性≫

坐剤には、解熱鎮痛、抗けいれん、鎮静、制吐、下剤、痔や潰瘍性大腸炎の治療など、さまざまな使用目的があります。

途中排出後に追加投与を検討する際は、過少投与と過量投与の両方のリスクを考慮することが重要です。

≪薬物の吸収がどの程度進んでいるか≫

坐剤は、直腸内で基剤が溶解した後、薬物が吸収されます。

一般に、挿入後10〜20分程度で溶解すると言われています。

排出された坐剤が、原形の状態を維持していない場合は、すでに薬物の吸収が始まっている可能性があります。

そのため、どの程度吸収されたか分からない状態で、すぐに追加投与することは避けたほうがよいとされています。

追加投与を考える際には、「投与から何分経過したか」だけでなく、「どのような状態で排出されたか」も確認することがポイントです。

ただし、坐剤の溶解の進み方は、基剤の種類や直腸内の状態などによって異なります。

そのため、同じ「途中排出」であっても、薬剤や患者によって吸収の進み具合が異なる可能性があります。

例:アセトアミノフェン坐剤の場合

挿入から1時間後に排出された場合には、再度挿入する必要はないという考え方が示されています。

アンヒバ®のインタビューフォームには、最高血中濃度到達時間(Tmax)は1.60±0.16時間とされており、1時間後では血中濃度が最高値(Cmax)付近に達していると推測されるためです。

この例からも、途中排出時の判断は、経過時間だけでなく薬剤ごとの吸収特性も考慮する必要があるとわかります。

なお、薬剤によっては、資料に具体的な対応の目安が示されているものもあり、以下に紹介します。

薬剤排出のタイミング対応の目安
アセトアミノフェン坐剤
ナウゼリン®坐剤
挿入して30分以内約2時間程度経過を観察し
全く効果がみられない場合は再度投与
アセトアミノフェン坐剤
ナウゼリン®坐剤
挿入して30分以上経過後再投与はしない
ダイアップ®坐剤原形をとどめた固形状で排出再度投与
ダイアップ®坐剤それ以外の状態で排出再投与しない(吸収が早いため)

(参考:横田俊平・田原卓浩・加藤英治・井上信明(編)『直伝 小児の薬の選び方・使い方』より)

※「坐剤が出てきたら○分以内なら入れ直す」と、すべての坐剤に同じルールを当てはめるのではなく、使用している薬剤の情報を確認することが重要になります。


3.なぜ薬剤によって再投与の判断が変わるのか?

上記でも触れましたが、その理由の一つが、薬剤によって吸収される速さが異なることです。

坐剤については、デコンボリューション法(投与後の血中濃度データから、薬物が体内へ吸収された経時的な変化を推定する解析手法)を用いて、累積吸収率の変化を推定した報告があります。

その報告では、累積吸収率が50%に到達するまでの時間に、薬剤による違いがみられています。

(参考:山下佳子ほか(病院薬学, 19:184-190, 1993)より)

ここで重要なのは、「坐剤だから、一定時間で同じように吸収される」とは限らないという点です。

例えば、ジクロフェナク坐剤を用いた検証では、直腸内環境を模した条件で、挿入5分後には約半分が溶解し、15分後には完全に溶解していたことが報告されています。

≪「溶解」と「吸収」は同じではない≫

坐剤が溶けたことと、薬物がすべて吸収されたことは同じではありません。

坐剤の形状が変化していても、薬物の吸収がどこまで進んでいるかを外見だけから判断することは難しい場合があります。

そのため、途中排出時の判断では、排出された坐剤の状態・経過時間・薬剤ごとの情報を組み合わせて考える必要があります。


4.途中排出時の対応情報は限られる

坐剤が途中で排出された場合の具体的な対応については、参考となる情報が限られています。

23種類の主な坐剤を調査した報告では、途中排出時の対応が明記されていた唯一の薬剤として抱水クロラール坐剤が挙げられています。

抱水クロラール坐剤は、鎮静目的などで使用される坐剤です。

臨床で頻繁に扱う機会は少ないかもしれませんが、添付文書に途中排出時の対応が明記されている数少ない例として紹介します。

エスクレ®坐剤の添付文書「適用上の注意」には、以下の記載があります。

本剤挿入後10分以内に排泄され、再投与を行う場合には、その形状が保たれていても、一部吸収されていることが考えられるので、慎重に行うこと。

なお、形状に変化が認められる場合には、再投与を差し控えること。

このように、見た目がそのままでも、一部吸収されている可能性を考慮するという考え方が示されています。


5.坐剤が途中排出する原因

坐剤が途中で排出される原因の一つに、挿入が浅いことが挙げられます。

坐剤が吸収部位の直腸内まで十分に挿入されず、肛門括約筋付近に留まっていると、外に押し出されやすくなります。

そのため、挿入後すぐに原形を保った坐剤が排出された場合は、挿入が浅かった可能性があります。

「挿入後すぐ」かつ「原形を保っている」という場合には、挿入位置が浅かった可能性を考え、再度挿入する必要があると考えられています。

なお、坐剤の挿入の目安として、肛門から指の第一関節程度(乳幼児では1〜1.5cm程度)奥まで挿入するとされています。

≪排便との関係≫

坐剤を挿入すると、その刺激によって便意を感じ、挿入した坐剤と一緒に排便してしまう場合があります。

それでも挿入後に便意を感じた場合には、しばらく我慢するよう勧められています。

また、坐剤が溶けることで便意がおさまる場合もあるとされています。


6.途中排出を防ぐポイント

途中排出を防ぐための工夫として、次のような方法が紹介されています

  • 使用前に排便を済ませておく
  • 坐剤を適切な深さまで挿入する
  • 挿入後、ティッシュなどで10秒ほど肛門を押さえる
  • 挿入後は激しい動きを避ける
  • 挿入してから30分程度は坐剤が排出されていないか確認する
  • 小児への挿入後は、しばらく縦抱きにする(肛門が収縮し、坐剤が出にくくなる)

まとめ

坐剤が途中で排出された場合の対応については、すべての坐剤に共通する明確な指針がなく、判断が難しいこともあります。

そのため、対応を考える際のポイントや、患者さんに確認・説明すべき事項を整理しておくことが大切です。

  • 坐剤の途中排出は、一定数の患者で経験している
  • 途中排出時には、「坐剤の使用目的と重要性」、「薬物の吸収程度」を確認する
  • 坐剤の溶解や吸収の進み方には、個人差や薬剤による差がある
  • 途中排出時の対応は薬剤ごとに異なり、すべての坐剤に共通する基準はない
  • 途中排出を防ぐ工夫を説明できるようにする

※この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。

特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。

制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。

法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。

なお、当ブログでは正確な情報の発信に努めておりますが内容の完全性・正確性を保証するものではございません。

この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。

参考文献

Rp+ 2025冬Vol.24 No.1 松本康弘〔7〕坐剤・浣腸剤 106.107

月刊薬事2022.4臨時増刊号, Vol.64 No.6,  大野能之「坐剤が途中排出してしまったらどうする?」Q25(第4章)135-138

直伝 小児の薬の選び方・使い方 横田俊平・田原卓浩・加藤英治・井上信明(編) 2020. 20.74-76

患者向け説明資材:ジクロフェナクナトリウム坐剤「日医工」 (坐剤の使い方・注意事項)2025

インタビューフォーム:アンヒバ坐剤小児用50・100・200mg(薬物動態に関する項)2024

ナウゼリン | 【公式】協和キリン医療関係者向け情報サイト 協和キリンメディカルサイト

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