
今日は熱性けいれんについて、病態を詳しく見ていきましょう。

てんかんと、熱性けいれんは別物なんですよね!

その通りです。症状も様々で、専門用語の違いにも注意が必要です。
この機会に復習しましょう。

はい、よろしくお願いします!
はじめに
小児の救急外来では、「熱性けいれん」を起こして受診する患児に出会うことがあります。
筆者自身、新人のころは「熱性けいれん」という言葉を知っていても、その定義や特徴を十分に理解できておらず、てんかんに似た疾患というイメージを持ったまま、ジアゼパム坐剤を投薬していた経験があります。
しかし、熱性けいれんはてんかんとは区別して考える必要がある疾患です。
また、「発熱時にけいれんを起こす病気」とだけ覚えてしまうと、実際の臨床では判断に迷うことがあります。
そこで今回は、熱性けいれんについて、以下のポイントを整理します。
- 熱性けいれんとは何か
- 「発作」にはどのようなタイプがあるのか
- 単純型と複雑型は何が違うのか
- 熱性けいれんはどの程度みられるのか
- 熱性けいれんには遺伝的な背景があるのか
なお、再発リスクや、将来のてんかん発症リスクについては別記事で詳しく解説しています。
1.熱性けいれんの定義
性けいれんは、主に生後6か月から満60か月(5歳)までの乳幼児期に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作性疾患です。
重要なのは、発熱に伴う発作であれば、すべてが熱性けいれんに該当するわけではないという点です。
たとえば、以下のような場合は、熱性けいれんとは区別して考える必要があります。
- 髄膜炎などの中枢神経感染症による発作
- 低血糖や電解質異常など、代謝異常による発作
- その他、明らかな発作の原因疾患がある場合
- てんかんの既往がある場合
つまり、熱性けいれんは「発熱に伴って起こった発作」かつ「発熱以外に明らかな発作の原因がない」という点が重要になります。
「発熱をきっかけとして起こる発作」と、「発作の原因となる別の病態が存在するケース」を区別することが、熱性けいれんを理解するうえでの基本です。

2.「発作」は、けいれんだけではない
「けいれん」という言葉から、手足をガクガクさせるような発作をイメージする人は少なくありません。
しかし、熱性けいれんは、必ずしも明らかなけいれんを伴うとは限りません。
たとえば、以下のような震えを目立って伴わない発作もあります。
- 脱力する
- 一点をじっと見つめる
- 眼球が上を向いたままになる

そのため、発作時の様子を確認するときには、「手足がガクガクしていたか?」だけではなく、「発作中に、子どもがどのような状態になっていたか?」を具体的に確認することが大切です。
保護者から「震えていなかったので、けいれんだとは思いませんでした」と聞くことがありますが、震えの有無だけで発作かどうかを判断しないことがポイントです。
3.単純型・複雑型とは?
熱性けいれんは、大きく単純型と複雑型に分類されます。
以下の3項目のうち、1つでも該当すれば複雑型、いずれにも該当しなければ単純型とされます。
| 分類のポイント | 内容 |
|---|---|
| 遷延性発作 | 発作が15分以上持続する (「10分以上」を基準とする論文もあり、 研究によって定義に幅がある) あくまで目安としての基準 (現場で発作の開始・終了を正確に見極めるのは難しい) |
| 焦点発作 | 体の一部分に優位にみられる運動発作 がみられる (半身のけいれん、眼球が一方向に偏るなど) けいれんを伴わずに一点を見つめたまま 動作が止まるだけのタイプも含まれる |
| 同一発熱機会での反復※ | 同一発熱機会に複数回発作を繰り返す (多くは初回発作から24時間以内) |

ここで、混同しやすいのが「反復」と「再発」です
この違いを理解しておくと、ガイドラインや資料を読むときにも理解しやすくなります。
| 反復 | 同じ発熱機会の中でけいれんを繰り返す |
| 再発 | 別の発熱機会に再び熱性けいれんを発症する |

4. 日本では熱性けいれんの報告頻度が比較的高い
熱性けいれんは、乳幼児期によくみられる疾患です。
その有病率には地域差があり、欧米ではおおむね2~5%、日本では**7~11%**とする報告があります。
この地域差の背景には、人種差・民族差・環境要因などが関わっていると考えられています。
一方で、日本国内の岡山県玉野市で行われた全数調査では、5歳までの有病率が**3.4%**と報告されており、欧米の報告と同程度でした。
このように、熱性けいれんの有病率は、調査方法や対象となった地域によって数値にばらつきがあります。
そのため、「日本では熱性けいれんが特に多い」と単純に考えるのではなく、地域や調査方法によって報告される有病率には幅があることを理解しておくことが大切です。
5.「繰り返すとどうなる?」は保護者が気にするテーマ
熱性けいれんを経験した保護者からは、「また起きるのでしょうか?」「何度も繰り返したら大丈夫ですか?」「将来、てんかんになってしまうのでは?」といった質問を受けることがあります。
熱性けいれんの再発リスクやてんかん発症リスクについては、保護者への説明でも重要なテーマです。
ただし、これらについては本記事では詳しく扱わず、別記事で保護者への説明方法も含めて整理しています。
🔗 「熱性けいれん 保護者の不安〜リスクと予後〜」
この記事では、以下の内容を詳しく解説しています。
- 発作が起きたときの対応
- 救急要請を検討する目安
- 熱性けいれんの再発リスク
- 再発予測因子
- てんかん発症リスク
- てんかん発症関連因子
- 「再発」と「てんかん発症」を混同しないための考え方
- 保護者への具体的な声かけ
本記事では内容の重複を避け、ここからは「熱性けいれんの遺伝的背景」について整理します。
6.熱性けいれんには遺伝的な背景がある
熱性けいれんには、発熱時に発作を起こしやすい体質に関わる遺伝的な要因があることが知られています。
実際に、熱性けいれんを経験した子どもの**第一度近親者(両親・同胞)**では、一般人口と比較して熱性けいれんの頻度が高いことが報告されています。
また、双生児を対象とした研究では、熱性けいれんの一致率は一卵性双胎で0.33、二卵性双胎で0.11とされ、一卵性双胎のほうが高いことからも、遺伝的な要因が関与している可能性が示されています。

ここで注意したいのが、「熱性けいれんには遺伝的な背景がある」ことと、「親から子へ熱性けいれんがそのまま遺伝する」ことは同じではないという点です。
熱性けいれんは、単一の遺伝子だけで発症が決まるものではなく、複数の遺伝的要因などが組み合わさり、発熱時に発作を起こしやすい体質に影響していると考えられています。
そのため、家族に熱性けいれんの経験者がいたとしても、「親が熱性けいれんを起こしたから、子どもも必ず発症する」という意味ではありません。
家族歴は、熱性けいれんを起こしやすい可能性を考える一つの材料として捉えると理解しやすいでしょう。

「熱性けいれんは遺伝しますか?」と聞かれたら
保護者から「熱性けいれんは遺伝しますか?」と質問された場合には、
「熱性けいれんを起こしやすい体質には、遺伝的な要因が関係していると考えられています。ただし、単一の遺伝子だけで決まるものではなく、ご家族に熱性けいれんがあったからといって、お子さんが必ず発症するわけではありません」
と説明すると、実態に近い表現になります。
つまり、
「病気そのものがそのまま遺伝する」というより、「発熱時に発作を起こしやすい体質」が家族内で共有されることがある
と考えると理解しやすいでしょう。
まとめ
最後に、この記事のポイントを整理します。
●熱性けいれんは、主に生後6~60か月の乳幼児に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作性疾患です。
●熱性けいれんには、脱力や一点凝視など、明らかなけいれんを伴わない発作もあります。
●焦点発作、15分以上の遷延性発作、同一発熱機会での反復のいずれかがあれば、複雑型に分類されます。
●熱性けいれんには遺伝的な背景があり、家族歴は発症しやすさを考える一つの要因です。
●ただし、熱性けいれんは単一の遺伝子だけで決まる疾患ではなく、「遺伝する」と単純に考えることはできません。
次の記事では、こうした病態や予後の理解を踏まえて、
「熱性けいれんを繰り返さないために、薬はどのように使い分けるのか?」
というテーマを取り上げます。
※なお、この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。
特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。
制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。
法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。
この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。
参考文献
熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 監修 一般社団法人日本小児神経学会/診断と治療社 2023.2-17
今日の処方 総編集者 浦部 昌夫、島田 和幸、 川合 眞一/南江堂 2019年、改訂第6版 716-718
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