
添付文書に小児薬用量の記載があるもの、ないものがありますよね。
用量が正しいかを確認するにあたって、記載がない時は本当に苦労します。

そうですね、実はある調査では、小児に処方される医薬品のうち、 『添付文書に小児薬用量が記載されている薬はその2割程度にとどまる』と結果がでています。
特に小児は個々の患者に合った薬の量(小児薬用量)が必要とされていますから、監査がより重要になりますね。

とっさに小児の薬用量が必要になった時にはどのように求めればよいのでしょうか・・・。

実は小児薬用量は成人量から換算式を用いて求めることが可能です。
今日は、添付文書に記載がなかった際にも活用できる「小児薬用量の求め方」について学んで行きましょう。

はい、よろしくお願いします!
1.薬物動態と小児薬用量
小児期は腎臓や肝臓の発達が顕著であり、それに伴った薬物動態の変化がみられます。
なかでも、乳幼児期では腎機能や肝機能が未熟なため、薬物動態も成人と異なります。
そのため新生児や乳幼児への投与は、安全性が確立していない薬剤も多く、慎重に投与量を設定することが必要です。
小児へ安全な薬物治療を行うためには、体重や年齢などに応じた「小児薬用量」での投与がポイントとなります。
2.添付文書に小児薬用量の記載がない時は?
小児薬用量を調べる際は、その医薬品の添付文書を活用するでしょう。
しかしながら、小児薬用量が添付文書に明確に記載されている薬はその2割程度と言われるほど、未記入の薬物も多い現状があります。
基本的に、成人の標準的な薬物量は添付文書に記載されていますが、小児の現状との差はなぜでしょうか?
これは、治験や製造販売後調査などによるデータの集積が少ないことで、小児の体内動態や感受性の発達変化に対して実質的なデータが不足し、小児の年齢別の標準的な用法・用量および安全性が明らかにされず、小児薬用量を明確に定めることが難しいためです。
では、このように添付文書に小児薬用量が記載されていない場合は、小児薬用量はどのように求めればよいのでしょうか。
成人の用量 (成人量)を基準に、年齢や体重のような一般的なパラメータを用いて換算式から小児薬用量を算出するとよいでしょう。
小児薬用量の算出方法の種類まとめ
成人量から小児薬用量を算出するために、体重、年齢、体表面積といったパラメータが用いられています。
このページでは、それらパラメータを用いた4つの算出式を紹介します。
なお、各々に長所と短所があり、活用する際にはしっかり見極める必要があります。

この換算式の中では④の体表面積の小児/成人比から求める方法が最も理想的とされています。
しかし後述するように、体表面積を求めるのはそう簡単ではなく、臨床現場で利用するにはやや複雑です。
体表面積を年齢から求められるようにした③「Augsberger Ⅱ 式」、またその簡易換算表である「von Harnack の換算表」の方がより臨床現場で活用されています。
①体重を使った算出方法(Clark 式)
成人の体重を68kgとして小児との体重比から小児薬用量を算出する手法がClark 式です。
ここで重要なポイントは、乳幼児期と成人との体重比では、肝臓や腎臓などによる代謝・排泄機能が一部相関しない点です。
そのため、理想的な投与量の算出方法とは言えません。

| 長所 | 短所 |
| 計算が簡単 計算結果が過量にならない(安全) | 小児の絶対投与量は成人量と比較して少ない 小児の単位体重あたりの投与量を 成人の体重に換算すると通常の成人量より多くなる |
②年齢による算出法 (Young式)
Young式は年齢のみで求められる簡易的な算出方法ではありますが、年齢ごとの体重や身長にはかなりの個人差があるため、活用するには現実的ではありません。

| 長所 | 短所 |
| 極めて簡単な方法 | 個人差に対応できず、現場では不向き |
③体表面積法・・・小児/成人比から求める方法(Crawford式)
Crawford式で使用されている「体表面積」は、体重や年齢などの他のパラメータよりも体液量、腎機能、肝重量などとの相関が高く、 実際の必要投与量によく一致します。
そのため、小児薬用量を成人の投与量から換算するためには最も理想的な算出方法とされています。
一方で、体表面積を求める方法はそう簡単ではなく、臨床現場で利用するにはやや複雑でもあります。
また、適切な用量換算を確実にするために、身長の測定誤差や身長と体表面積の計算誤差などに注意を払う必要があります。

| 長所 | 短所 |
| 小児薬用量を求める最も理想的な方法 生後2ヵ月以降の乳児には体表面積法がおおむね適用可能 | 体表面積を計算した上で求める必要がある (ノモグラムを使い身長と体重から体表面積を求める) 新生児期には過量傾向 幼児期では少量傾向 といわれている |
④小児と成人の体表面積比を年齢から簡単に求めれるようにした 算出方法(AugsbergerⅡ式)
「Augsberger Ⅱ 式」は、上記の③よりも簡易的に、「小児と成人の体表面積比」を「年齢」から簡単に求めれるようにした算出方法です。
年齢と体表面積を使って成人に対する用量比を求めることができ、計算が簡単な反面、1歳未満は全て成人量の20%となるため、適用できない点に注意が必要です。

| 長所 | 短所 |
| 年齢のみで体表面積比を考慮した計算が可能 換算表が存在するため、臨床現場で活用しやすい | 1歳未満には適用不可能 |
また、この「Augsberger Ⅱ 式」の簡易換算表である「von Harnack の換算表」が存在し、臨床現場で活用されています。

| 長所 | 短所 |
| 乳児に対しても細かい用量設定が可能 | 同体重であっても 年齢が異なる小児への投与量に差が生じる |
この表では、1歳未満も6カ月、3カ月、新生児などと分類されており、Augsberger Ⅱ 式では適応不可能であった1歳未満にも活用できるようになりました。
一方で、Augsberger II 式に比べると1歳以上では、3歳、7.5歳、12歳と大雑把に分類されているため、同体重であっても、計算結果が過量になることもあるため注意が必要です。
例)7歳半で体重30kg(7歳半の平均体重➕約1SD)→ 成人量の1/2量を投与
12歳で体重30kg(12歳の平均体重➖約1SD)→ 成人量の2/3量を投与
Augsberger Ⅱ 式とvon Harnack 換算表はそれぞれの場面や患児ごとに使い分けするとよいでしょう。

臨床現場での工夫~実用書・早見表~
上記では添付文書に小児薬用量の記載がない場合に、主にAugsbergerⅡ式や von Harnack 換算表などを用いて、成人量から小児薬用量を換算する方法を提示してきました。
しかしながら、多忙な臨床現場では毎回計算する事は、あまり現実的ではありません。
各学会のガイドラインを参照することや、 小児薬用量をまとめた実用書が発行されているので、活用することをお勧めします。
「新小児薬用量」 (診断と治療社、3年ごとに改訂されている) や、「実践 小児薬用量ガイド」 (じほう) などが有名です。
また、 「松本康弘の極める!小児の服薬指導」の著者である松本康弘氏の務める薬局では、薬剤ごとに体重10kg当たりの投与する最大量と最小量の早見表を作成しているようです。
頻繁に処方される医薬品をリストアップすることで、調剤や監査の効率が上がる工夫の良い例でしょう。
参考文献
横田 俊平 田原 卓浩 加藤 英治 井上 信明 直伝 小児の薬の選び方・使い方 2020.13-14
編集 医療情報科学研究所 薬がみえる vol.4 2020 329
松本 康弘 松本康弘の極める!小児の服薬指導 2018,28−31
荒木 博陽 小児領域の服薬指導Q &A 2009.193

