熱性けいれんの関連薬~ジアゼパム坐剤・抗てんかん薬・解熱薬の使い分け~

Ana
Ana

小児に解熱剤を調剤していると、保護者の方から「以前、熱性けいれんを起こしたことがあります」と聞くことがあります。

熱性けいれんの予防にはジアゼパム坐剤を使うものだと思っていましたが、そのお子さんにはジアゼパム坐剤が処方されていませんでした。

熱性けいれんの既往があるのに、どうしてジアゼパム坐剤は処方されていないのでしょう?

薬剤師
薬剤師

とても良い疑問ですね。

熱性けいれん再発予防のためのジアゼパム坐剤には、処方される基準があります。

今日はその内容を含め、熱性けいれんの予防に関連する薬剤について学んで行きましょう。

Ana
Ana

はい、よろしくお願いします!


はじめに

熱性けいれんに関連して使用される薬には、発熱時の再発予防に用いられるジアゼパム坐剤、継続的な予防について検討される抗てんかん薬、発熱による苦痛を和らげる解熱薬があります。

ただし、これらはすべて「熱性けいれんを予防する薬」というわけではありません。

では、それぞれの薬はどのような目的で使い分けられているのでしょうか。

熱性けいれんの薬物療法では、以下を考慮しながら、個別に判断することが重要です。

  • 何を目的として使用するのか
  • どの程度のリスクがあるのか
  • 薬による副反応などの不利益はないか

この記事では、熱性けいれんに関連して使用される薬を、次の3つに分けて整理します。

  • ジアゼパム坐剤
  • 抗てんかん薬の継続内服
  • 解熱薬

1.ジアゼパム坐剤は全員に必要?

熱性けいれんの既往がある小児に、発熱のたびにジアゼパム坐剤を使用するべきなのでしょうか。

答えは「いいえ」です。

まず知っておきたいのは、熱性けいれんを起こしたことがある=発熱時に毎回ジアゼパム坐剤を使用するというわけではないことです。

ジアゼパムの間欠投与には、熱性けいれんの再発を減らす効果が期待されています。

一方で、眠気やふらつきなどの副反応があります。

また、ジアゼパムによる鎮静によって、髄膜炎や脳炎・脳症など、発熱の原因として見逃してはいけない疾患の評価が難しくなる可能性もあります。

さらに、単純型熱性けいれんは基本的に予後が良好です。

こうした点から、ガイドラインではジアゼパム坐剤のルーチン使用は推奨されていません

そのため、熱性けいれんの既往がある小児に一律に使用するのではなく、発作の特徴やリスクを踏まえて、必要な場合に使用を検討するという考え方になります。


2.ジアゼパム坐剤が検討されるケース

ガイドラインでは、熱性けいれんの再発予防を目的とした、ジアゼパム坐剤の使用基準が示されています。

以下に挙げた基準のいずれかに該当する場合、熱性けいれんの再発予防を目的として、有熱時のジアゼパム坐剤投与が推奨されています。

ジアゼパム坐剤の適応基準≫

① 遷延性発作があった場合(発作が15分以上持続した場合)

② 以下のリスク因子のうち2つ以上を満たす熱性けいれんを、2回以上経験した場合

  • 焦点発作、または24時間以内に発作を繰り返した
  • 発作以前から神経学的異常・発達遅滞がある
  • 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴がある
  • 初回発作が12か月未満
  • 発熱から発作までの時間が短い
  • 38℃未満の発熱で発作が起こった

ただし、これらの基準に当てはまらない場合でも、必ずしもジアゼパム坐剤が処方されないとは限りません。

医療機関の体制や自宅から医療機関までの距離などの地域的な事情、家族の不安や心配なども考慮し、処方が検討される場合があります。

「熱性けいれんの既往があるから使う」のではなく、発作の特徴やリスクなどを踏まえて、必要性を判断します


3.ジアゼパム坐剤の投与タイミングと基本

ジアゼパム坐剤は、熱性けいれんの再発予防を目的として使用されます。

一方で、発熱の原因疾患そのものを治療する薬ではありません。

投与期間は、最終発作から1〜2年、または4〜5歳までが一つの目安とされています。

ただし、投与期間については強いエビデンスがあるわけではなく、臨床的な目安です。

ジアゼパム坐剤が処方されている場合、実際には「いつ使えばよいのか」を理解しておくことが重要です。

一般的な使用方法として、体温37.5℃を目安に1回目を挿入し、その後8時間後に2回目を投与します。

ただし、2回目の投与時に体温が下がっている場合の対応は、医師によって異なることがあります。

そのため、実際の使用にあたっては、処方内容や医師からの指示を優先してください。

≪なぜ「8時間後」に追加するの?≫

ジアゼパム坐剤を8時間間隔で使用する背景には、熱性けいれんが発熱前後の24時間以内に起こりやすいことがあります。

日本で使用されているジアゼパム坐剤では、0.5 mg/kgを8時間間隔で2回投与することで、初回投与後24時間にわたって有効な血中濃度を維持することが期待されています。

つまり、発作が起こりやすい発熱前後の24時間をカバーすることを目的として、8時間間隔での投与が行われます


4.ジアゼパム坐剤を使うときの注意点

坐剤を使用した後も、意識状態や全身状態を確認することが重要です。

ジアゼパム坐剤を使用すると、眠気やふらつきなどの副反応がみられることがあります。

特に注意したいのが、鎮静です。

鎮静が強い場合、子どもの意識状態を評価しにくくなることがあります。

発熱の原因として、髄膜炎や脳炎・脳症などの重篤な疾患が隠れている可能性もあるため、ジアゼパムによる鎮静が鑑別の妨げとなる場合がある点にも注意が必要です。

また、過去にジアゼパムで強い鎮静などの副反応がみられた場合には、0.3 mg/kg程度の少量投与を検討することもあります。

ただし、具体的な投与量や使用方法は、患児の状態や処方内容によって異なるため、実際には医師の指示を優先します。

※ジアゼパム坐剤と解熱薬など、坐剤を併用するときの具体的な使用方法については、次の記事で詳しく解説します。

🔗「ジアゼパム坐剤を安全に使うために:投与方法・順番・間隔のポイント」


5.抗てんかん薬を毎日飲む必要はある?

「熱性けいれんを繰り返すなら、毎日薬を飲んで予防したほうがいいのでは?」と考える保護者もいます。

しかし、熱性けいれんに対して抗てんかん薬を継続的に使用することは、一般的には推奨されません

熱性けいれんそのものは基本的に予後の良い疾患である一方、抗てんかん薬には副反応があります。

そのため、「発作を予防できるから使う」という単純な判断ではなく、発作を減らすメリットと、薬を使い続けることによるデメリットの両方を考える必要があります。

≪代表的な抗てんかん薬≫

これまで、熱性けいれんの予防を目的として、さまざまな抗てんかん薬が検討されてきました。

代表的な薬について整理すると、以下のようになります。

薬剤ポイント
フェノバルビタール再発抑制効果が報告されている
副反応の出現率が高いため、有用性は低いとされている
(報告により61〜77%程度)
バルプロ酸有効性について報告に幅がある
肝毒性・膵炎などの重篤な副反応にも注意が必要
カルバマゼピン熱性けいれんの予防に対する有用性が低いとされる報告がある
トピラマート第一選択薬が使用できない場合など
限定的な状況で検討されることがある

6.抗てんかん薬を検討するのはどんな場合?

例外的に継続的な内服が検討されるのは、ジアゼパム坐剤などによる通常の予防方法では十分に対応できないケースです。

たとえば、以下の場合が挙げられます。

  • ジアゼパム坐剤を使用しても、長時間(15分以上)の発作が繰り返されるケース
  • 発作が非常に頻回に起こるケース
  • 発作の進行が速く、間欠的な予防投与では対応しにくいケース

つまり、抗てんかん薬は、「熱性けいれんがあるから使う薬」ではなく、「通常の予防方法では十分に対応できない場合に検討される薬」と整理すると理解しやすいでしょう。


7.解熱薬で熱性けいれんは予防できる?

ここは、非常に誤解されやすいポイントです。

結論からいうと、解熱薬は熱性けいれんを予防するための薬ではありません

解熱薬に、熱性けいれんの再発を予防する効果は認められていません。

そのため、熱性けいれんの再発予防を目的として、解熱薬を使用することは推奨されていません

≪解熱薬で熱を下げると、熱が再び上がったときにけいれんが起こる?≫

「解熱薬で熱を下げても、薬が切れて熱が再び上がる時にけいれんが起こるのでは?」と心配になることがあります。

しかし、解熱薬を使用した後の熱の再上昇が、熱性けいれんを誘発することを示す十分な根拠はありません

そのため、熱の再上昇を心配して、必要な解熱薬の使用を控える必要はありません

≪解熱薬は何のために使うの?≫

ここで大切なのは、「熱性けいれんを予防すること」と「発熱によるつらさを和らげること」は別の目的だという点です。

解熱薬は、発熱の原因そのものを治療する薬ではありませんが、発熱による苦痛や不快感を和らげる目的で使用されます。

したがって、熱性けいれんの既往があるからといって、解熱薬を避ける必要はありません。

解熱薬を使う目的考え方
熱性けいれんの再発予防再発予防を目的とした使用は推奨されない
発熱による苦痛・不快感の緩和 必要に応じて使用

8.まとめ

ここまで紹介した3つの薬について、目的と位置づけを整理しておきましょう。

薬剤主な目的・位置づけ基本的な考え方
ジアゼパム坐剤熱性けいれんの再発予防適応を検討したうえで
発熱時の間欠投与を検討
抗てんかん薬通常の予防方法では
対応が難しい場合に
継続的な発作予防
通常は使用せず、
限定的なケースで検討
解熱薬発熱による
苦痛・不快感の緩和
熱性けいれんの予防を目的には使用しない

つまり、「熱性けいれんの既往がある=3種類の薬を使う」というわけではなく、それぞれ目的が異なります

次回は、「ジアゼパム坐剤と解熱薬の坐剤を併用するときに知っておきたい、投与する順番や間隔などの具体的な注意点」について、実務的な視点から解説します。


※なお、この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。

特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。

制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。

法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。

この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。

参考文献

熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 監修 一般社団法人日本小児神経学会/診断と治療社 2023.59-77

今日の処方 総編集者 浦部 昌夫、島田 和幸、 川合 眞一/南江堂 2019年、改訂第6版 716-718

薬局 vol.73 No.7 山本 佳久 「ジアゼパム坐剤の2回目投与のタイミングを指導する」2015.104.105

極める!小児の服薬指導 松本 康弘/日経BP社 5版.2018年11月 167

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