
大変です!
小児の処方箋を受け取りましたが、添付文書に用法用量の記載がありません!
この処方は誤っていますよね!!

・・・ん?少し落ち着きましょう!
決めつけるにはまだ早いですよ。
添付文書の用法に記載がない処方内容は、全て不適という事ではないんですよ?

添付文書に記載されている内容は、日本で承認されている医薬品の使用方法ですよね?

「承認された」は、「日本での保険適用が可能な医薬品の使用範囲」を意味しています。
一方で、日本国内では未承認であっても、海外において有効性や安全性のエビデンスが確立されている治療が行われることもありますよ。
このように、承認された使用範囲外で行われる治療は、「適応外使用」と呼ばれています。

なるほど。
「添付文書は医薬品が使える絶対範囲」というのは誤った認識なんですね。

私も実習生の頃は同じように誤解していたものです。
それでは、今日は「添付文書の用法・用量の記載の意味」について、学んで行きましょう!

はい、よろしくお願いします!
1.この章で伝えたい事
まず結論からお伝えします。
「添付文書に記載がない」ことは、「その使い方(適応外の使い方)で医薬品を使ってはいけない」ということを意味するわけではありません。
ここを誤解してしまうと、本来確認すべき治療の選択肢を見過ごしたり、疑義照会の際に誤った判断をしてしまったりすることがあります。
これは新人や実習生の方が陥りやすい誤解のひとつのため、注意が必要です。
2.添付文書の記載内容は、どのように決定しているか?
そもそも、どのようにして添付文書に記載されている内容は決まっているのでしょうか。

通常、添付文書は、製薬企業が製造・販売の承認を受ける際に実施した、日本国内での臨床試験の結果をもとに作成されています。
厚生労働省の通知(平成29年、薬生発0608第1号)でも、効能・効果や用法・用量については「承認を受けた内容を正確に記載すること」と定められています。
つまり、添付文書に記載されている適応や用法・用量は、国内の臨床試験データに基づいて承認された内容ということになります。
ただし、すべての記載がゼロから国内臨床試験を経て承認されているわけではありません。
日本ではまだ承認されていない、あるいは適応外の使い方であっても、「公知申請」という手続きを経て承認を受け、添付文書に記載されるケースがあります。
これを「医学薬学上公知」と呼びます。
先ほどの厚生労働省の通知にも、「承認を要しない医薬品にあっては、医学薬学上認められた範囲の内容を正確に記載すること」という一文があり、これが公知申請に該当する記載にあたります。
米国・英国・ドイツ・フランス・カナダ・オーストラリアのいずれかの国ですでに承認されている医薬品について、海外の臨床データをもとに日本の医学系学会が厚生労働省へ要望書を提出します。
その後、有効性・安全性の科学的根拠が十分で、医療上の必要性が高いと評価された場合、新たに臨床試験を(全部または一部)実施することなく、厚生労働省の部会で承認されます。
なお、公知申請を行うためには、以下の条件に該当する必要があります。
医学薬学上公知として認められるための主な条件
・海外での承認、使用実績、申請資料が入手可能であること
・海外で公表された論文や総説が存在すること
・専門誌への論文掲載や、国内外の学会のガイドライン・指針があること
・公的な研究事業の委託研究などによる臨床試験の成績が存在すること
・すでに十分なエビデンスがあり、広く使われている医薬品であること(新規医薬品は対象外)」
※文献2より引用
3.「未記載」とは何を意味するのか
ここまでを踏まえると、添付文書は「保険適用が可能な、承認された医薬品の使用範囲」を示すものだと言えます。
そのため、「添付文書に未記載」=「その使い方には保険が使えない」ということにはなりますが、
「添付文書に未記載」=「効果や安全性がないと証明している」というわけではありません。
単に、承認申請の際にそのデータが提出されていない(あるいは公知申請の対象になっていない)というだけのことも多いのです。

4.まとめ
添付文書に記載のない用法・用量で医薬品を投与することを「適応外使用」と呼びます。
適応外使用そのものが直ちに問題というわけではありませんが、保険適用外となる可能性がある点には注意が必要です。
添付文書の記載だけで「使えるか・使えないか」を判断するのではなく、公表論文やガイドラインなど適切な情報を収集したうえで有効性と安全性を評価し、医薬品の適正使用につなげることが大切です。
※なお、この記事は、医療従事者・医療系学生の方に向けて、勉強や情報整理の参考にしていただくために書いています。
特定の治療法やお薬の使用をすすめるものではありません。
制度や通知、ガイドラインなどの内容は、書いた時点の情報をもとにしています。
法令や添付文書は改訂されることがあるので、実際の現場で判断する際は、必ず最新の添付文書やガイドラインなど一次情報をご確認ください。
この記事を参考にされたことで生じた結果について、責任は負いかねますので、実際の治療方針は担当の医師・薬剤師の判断のもとで決めてください。
参考文献
1)編集 原島 知恵/南山堂 レシピプラスvol.24 No.1 もう、こわくない!子どもとくすり 2025.1 .26.27
2)江畠 麗 薬局 vol.73 No.7 小児への適応外使用に関する情報を入手する 2022.6 46-49
Anaとクスリ 