薬剤師さん、聞いてください!
ん?Anaさん、どうしました?
今日の実務実習で、緑内障の目薬を始めたばかりの患者さんに
「眼圧が高いとなんで良くないのかな、何も症状ないのに」といわれました。
緑内障の初期は自覚症状がないので、薬を使う意義を理解してもらうのは大切ですね。
眼圧が高いと、どのような問題がありますか?
それでは、今日は緑内障の病態について、再確認しましょう。
はい、よろしくお願いします!
緑内障の定義とは?
緑内障は「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に降下させることにより、視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的・構造的異常を特徴とする疾患」と定義付けられています。
通常、22mmHg以上は眼圧が高いと表現されますが、後述するように、正常眼圧内(10-21mmHg)であっても緑内障と診断される方もいるため、注意が必要です。
緑内障は眼圧上昇をきたしえる疾患の有無・不随する要因により以下に分類されます。
- 原発緑内障:眼圧ないし視神経障害の原因を他の疾患に求めることのできない(=原因不明)病態。加齢とともに発病しやすく、隅角所見により原発開放隅角緑内障/原発閉鎖隅角緑内障と分けられる。
- 続発緑内障:他の眼疾患(ex:ぶどう膜炎や外傷)や、全身疾患あるいは薬物使用(ex:ステロイド点眼、内服)などにより眼圧上昇が生じた病態。
- 発達緑内障:先天的な原因により、隅角の発育異常が起きるため眼圧上昇をきたす病態。
- 原発閉鎖隅角緑内障:房水の出口の隅角がふさがる病態。
- 原発開放隅角緑内障:房水の出口フィルター役割の繊維柱帯が根詰まりを起こし、排出しにくくなる病態。
※正常眼圧緑内障 : 眼圧が正常範囲内(10-21mmHg)でも視神経の脆弱性により視神経乳頭の変化をきたす病態です。
原因は毛細血管の血流が悪いことや、視神経そのものが弱いことなどが指摘されていますが、未だ解明されていません。
また、日本人の緑内障患者の約7割が正常眼圧緑内障と言われています。
※急性緑内障発作 : 原発閉鎖隅角緑内障での急激な眼圧上昇により激しい頭痛、眼痛、嘔吐等の症状をきたします。
突然失明する危険性もあり、早急な治療が求められます。
眼圧が高いと、どうなる?
眼圧の上昇により、視神経乳頭の変化と、それに相当する視野障害をきたします。
緑内障初期には自覚症状はほどんどありませんが、中期以降は視野障害を自覚するようになります。
治療を放置してしまうと、次第に見えづらくなり、失明に至る危険性があるため、早期発見、早期治療が重要となります。
緑内障の治療とは?
緑内障は視機能(視力、視野など)を慢性かつ進行性に障害する不可逆的な疾患です。
早期治療が重要です。
現在、障害を受けた視神経を回復する方法は確立されておらず、
視神経障害の進行スピードを抑える眼圧降下が治療の中心です。
なお、治療には薬物療法、レーザー治療、手術療法があり、病型に応じて治療法が選択されます。
治療目標は?
目標眼圧は、視神経障害の進行を抑制できる眼圧レベルを患者ごとに設定します。
その際、病期や年齢、以下の進行リスク因子の有無などが目標設定のポイントとなります。
最大の危険因子 : 絶対的・相対的な高眼圧 / 眼圧の変動
その他危険因子 : 加齢 / 家族歴 / 近視 / 眼圧と直接関連しない乳頭出血 など
また、眼圧が正常範囲内であったとしても、正常眼圧緑内障は視神経の脆弱性により視神経乳頭の変化をきたします。
ただ眼圧を正常範囲内にコントロールすればよいのではなく、現状よりも目標数値を下げて、視神経を守る治療を行います。
以下のような暫定的な一般的目標眼圧が設定されています(「緑内障診療ガイドライン 第4版」に則る)。
- 原発開放隅角緑内障 初期 : 19mmHg以下
- 原発開放隅角緑内障 中期 : 16mmHg以下
- 原発開放隅角緑内障 後期 : 14mmHg以下 もしくは 無治療時眼圧から20~30%眼圧降下
- 正常眼圧緑内障 : 無治療時眼圧から20~30%眼圧降下
※参考書により、目標眼圧の記載はやや異なります。参考まで下記に記します。
視野異常がみられる緑内障(初期) → 15mmHg以下(あるいは20~30%眼圧降下)
進行した視野異常がみられる緑内障(中期以降) → 12mmHg以下(あるいは30%以上眼圧降下)
参考文献
庄司 純 他 点眼薬クリニカルブック 2020,127-130
岡庭 豊 他 薬がみえる vol.2 2016,373-375
大鹿 哲郎 名医が答える!緑内障 加齢黄斑変性 治療大全 2023 38-74
浦部 昌夫 他 今日の処方 2019,797
中原 保裕 2020-2021 処方がわかる 医療薬理学 2020,343-343