化粧品にも使用されているように、ヒアルロン酸には保湿効果があって、
ドライアイ治療に使われているんですよね!
使い始めればドライアイが将来完治したりするのでしょうか?
実はヒアルロン酸はあくまでも「涙の補充」としての役割なんです。
「涙の性質を改善」する効果は持ち合わせいません。
それはすなわち「今をよくする」薬であり、将来にわたる改善効果はないのです。
それでは保湿のためだけに使ってたんですね・・・・。
確かに保湿作用を持っている成分ですが、
実は他にも眼にやさしい効果を持ち合わせているんですよ。
今日はよりヒアルロン酸について詳しくなって帰りましょうね。
はい、よろしくお願いします!
概要
ヒアルロン酸ナトリウム(以下、ヒアルロン酸)はドライアイの症状になった人であれば、ほとんどの人が利用したことのある成分でしょう。
効力は短く、1日数回点眼をする必要がありますが、しっかりと使用していれば67.5%程度の人の症状が改善すると言われており、多くの患者が使用しています。
眼に負担がないと思われていますが、副作用はゼロではなく、かゆみや刺激、充血などが発生した報告があります。
眼でのヒアルロン酸の働き
ヒアルロン酸はどのような性質があるのか学んでいきましょう。
ヒアルロン酸は高分子ムコ多糖体であり、分子量が大きく、相互作用が強いため以下の特徴を持っています。
- 粘弾性(クッションのような働き)をもつ
- 保水性をもつ
- 創傷治癒への影響がある
この特徴のうち、ドライアイ治療においては保水性と創傷治癒への影響を目的に使用されています。
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保湿性について
保湿の性質は点眼液に含まれるヒアルロン酸の分子量と濃度によって決まります。
ヒアルロン酸の点眼で使用されている規格には0.1%と、より濃度の濃い0.3%の2種類が存在し、その保湿性の違いで使い分けされています。
濃度の濃い製剤ほど保湿効果が強く、より良い製剤のように思えますが、濃度が濃いほどヒアルロン酸に眼表面の水分がより引っ張られてしまい、0.3%の使用後さらに乾燥感を訴える人もいるため、注意が必要です。
それゆえに、単に角膜の病状だけではなく、使用感に合わせた薬剤選択も重用となります。
創傷治癒への影響について
通常角膜に傷ができると、傷口にヒアルロン酸が生成され、周囲からの細胞遊走がはじまり、つぎにコンドロイチンが産生され、最終的には傷跡の治癒に至ります。
すなわち、創傷部へのヒアルロン酸の塗布は傷を癒し、跡が残りにくする作用があるということです。
しかしながら、慢性炎症を促進する可能性があるという理由で、炎症性疾患に続発した角膜上皮障害にたいしては慎重に投与すべきと言われています。
〇ヒアルロン酸は白血球の多くに発現がみられるタンパク質(CD44)と結合し、慢性炎症性疾患を促進する
炎症性刺激によって内皮細胞におけるヒアルロン酸の発現が亢進され、炎症部位で白血球と相互作用をおこす
↓
CD44とHAが炎症部位へ白血球動員を促す(遊走する)ことにより炎症促進的な働き
↓
慢性炎症性疾患を促進
〇低分子ヒアルロン酸が炎症組織においてフリーラジカルなどに分解されると慢性炎症性疾患を促進する
フリーラジカルにより分解された低分子ヒアルロン酸
↓
血管新生作用とサイトカイン・ケモカインなどの誘導作用
↓
白血球の遊走を招くことにより炎症促進的な働き
↓
慢性炎症性疾患を促進
製剤の工夫
ヒアルロン酸は角膜上皮障害に対する治療薬として期待されていますが、含有されている防腐剤が角膜上皮に毒性を与えかねないため、防腐剤を工夫した製剤も登場しています。
実際の製剤の例で見比べてみましょう。
保存剤として角膜毒性が軽減とされるクロルヘキシジングルコン酸塩が使用されていたり、防腐剤を使用しない使い切りユニットドーズタイプの点眼剤であるヒアレインミニ®。さらに、防腐剤を含有せずフィルターを通して微生物をキャッチして微生物汚染を防ぐPF容器を使用した製剤も登場しています。
しかしながら、ヒアルロン酸製剤全てが目に優しい防腐剤を使用しているとは限りません。
以下のように、角膜上皮に毒性を与えることで知られている「ベンザルコニウム塩化物」が使用されているメーカーもあるため、調剤薬局でもらった製剤によっては注意が必要となります。
参考文献
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各メーカの添付文書