ドライアイの患者さんは様々な処方パターンがありますが、
様々ある薬剤からどのように選ばれているのでしょう。
薬剤の選択には病態の原因に合わせた選択と、
主訴を改善するための選択があるようです。
根拠があって選択されているんですね。
それでは今日は、
ドライアイ治療の薬剤選択について学んでいきましょう。
はい、よろしくお願いします!
理解のポイント
- 涙液層の安定性低下の原因に合わせた薬剤選択
- 自覚症状に合わせた薬剤選択
治療方針
ドライアイ診察基準*(2016年度版)は、自覚症状と涙液層不安定化の確認ができると確定診断がつけられ、治療が開始します。
近年病態の理解が進み、人工涙液のみならず、角結膜上皮治療用点眼液、水分分泌促進薬、ムチン産生促進薬など、新しい薬理作用を持つ点眼薬が臨床で使用されるようになってきました。
これに伴い、涙液層の安定性を低下させる原因に合わせた眼表面の層別治療(TFOT:tear film oriented therapy)という新しい治療が広まっています。
- 人口涙液 → 水分補給
- ヒアルロン酸 → 水分補給
- ジクアホソル → 水分、油分補給 ムチン増加作用
- レバミピド →ムチン増加作用 炎症抑制作用
- 少量の眼軟膏 → 油分を補充
- 自己血清の点眼 → 角膜上皮細胞の生存・修復に必要な成分を補充
- ステロイド → 眼表面における炎症を抑制する
このように、患者各々が抱えているドライアイの病理生理に最適な点眼薬を選択されているのです。
自覚症状に合わせた薬剤選択
涙液層の安定性を低下させる原因の他にも、主訴によって薬剤を決定することがあります。
ドライアイの自覚症状は多岐にわたりますが、乾き、痛み、異物感、疲れは特に感じやすい症状でしょう。
以下のように薬剤を使い分けすることで、辛い主訴が改善されると言われています。
- 主訴が「痛み」「異物感」 → レバミピド (ムコスタ®)
- 主訴が「乾く」「疲れる」 → ジクアホソル (ジクアス®)
ここで、処方内容の例を挙げます。
1)軽症ドライアイ
主訴が乾燥感、疲れ → ジクアス® 1日6回
異物感、痛み → ムコスタ® 1日4回
両方 → ジクアス®とムコスタ®併用
2)重症ドライアイ
主訴が充血 → フルオロメトロン 1日2−4回
痛み → タリビット眼軟膏
※重症ドライアイでは炎症が症状悪化に関与していることもあり、ステロイド点眼薬の併用も考慮されます。また、自己採血点眼を処方する施設もあります。
患者のアドヒアランス向上のため、薬剤の使用される意義についてしっかり理解してもらうことが重要です。
参考文献
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河野 紀子 特集 かかりつけ薬剤師のための 目薬の服薬指導 NIKKEI Drug Information 2019.10 ,8
谷戸 正樹 眼科薬剤処方 2022,35-42
浦部 昌夫他 今日の処方 改訂第6版 2019,790-793