眼科の処方にはドライアイ治療薬だけの患者さんを多く見かけます。
眼の乾燥で通院することは、そんなにも重要なのでしょうか・・・。
なるほど。ドライアイの症状に対する知識不足のようですね。
まず、ドライアイは涙の量だけが原因ではないんですよ。
それに、ドライアイであることで、続発的に眼への影響もあり、治療は大切です。
ドライアイは私が考えているよりも
もっと深いものなのかもしれません…!
それでは今日は、ドライアイの病態について学んでいきましょう。
はい、よろしくお願いします!
理解のポイント
- ドライアイを放置すると?
- 涙の必要性
- ドライアイの定義
- ドライアイの原因
ドライアイを放置すると?
ドライアイにはどのような症状があるのでしょうか。
実は「目の乾き」だけがドライアイの症状ではありません。
眼のゴロゴロ感、痛み、見えにくさ、眼の重さ、涙目、疲れ目、イライラ、うつ症状、更年期様症状、頭痛、肩こり、冷え性、充血、黒目が小さくなる、まぶたの開きが悪くなる・・・など、一見ドライアイとは無関係なものまで、多様な自覚症状が発現すると言われています。
また、ドライアイにより涙液層の涙液量減少、涙液成分異常などの安定性低下が生じると、外部からの刺激物によって角膜や結膜上皮細胞の炎症が起き、さらに涙液層の安定性が低下することでドライアイが重症化してしまうという悪循環が生じます。
以上のように様々な自覚症状が改善され、さらに重症化防止ができるとなれば、ドライアイ治療の重要性が理解できますね。
涙とは
そもそも、涙液は何のために存在しているのでしょう。
涙は様々な角度から私たちの眼を日々守ってくれています。
- 外部刺激(摩擦、異物、微生物など感染源)からの保護
- 角膜、結膜の乾燥を防止
- 滑らかな曲面を維持し、視機能キープ
- 酸素や栄養を眼に供給
- 眼表面の傷の治癒
涙は水と油の2層構造で、眼の角膜・結膜表面を層状に覆っています。
質のよい涙はイラストのように、水層の表面に油の層がきれいに張っており、各々の層には水層が蒸発しないようにするための特徴を持っています。
油層はまぶたにあるマイボーム腺から分泌され、水の層の表面をコーティングすることで蒸発を防ぎ、保湿効果をもたらします。
一方、水層の成分中には、糖タンパク質であるムチンが含まれおり、その性質がドライアイの状態、症状を緩和します。
ムチンには分泌型ムチンと膜型ムチンの2種類が存在し、おのおの働きが異なります。
- 膜型ムチン・・・・まぶたの結膜上皮と角膜上皮の摩擦を軽減する
- 分泌型ムチン・・・ゴブレット細胞から分泌され、水層のとろみを増し蒸発を防ぐ
ドライアイの病態
ドライアイ診察基準*(2016年度版)では自覚症状と涙液層不安定化の確認ができれば、確定診断がつけられることが表記されています。
また、日本ドライアイ研究会で発表された定義は以下の通りです。
「ドライアイとは、様々な要因により、涙液層の安定性が低下する疾患。眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある。」
※ここでの「涙の安定性」とは、涙が一定の厚みで目の表面を覆う状態が維持されることを表します。
すなわち、ドライアイは何らかの理由で涙液層の安定化が低下した状態ということです。
ドライアイの原因
ドライアイの原因は涙の生産が悪い印象を持っている人が少なくないですが、そうとは限りません。
ドライアイは涙液の安定性を低下させる原因により「涙液減少型」と「蒸発亢進型」に分類されます。
・涙液分泌減少型:涙腺の機能低下や破壊などにより、涙液の生成量が低下が原因
加齢 抗コリン薬 シェーングレーン病などから起因される
・蒸発亢進型:涙液の質の低下、角膜/結膜上皮の障害、眼瞼の機能や形態の異常などにより、涙液が乾きやすいことが原因
長時間のVDT作業 喫煙 コンタクトレンズ装着 防腐剤などから起因される
このように、ドライアイは涙液の量、涙の性質、眼周辺の状態・機能低下、外因性の刺激など、様々な原因によって誘発されるのです。
参考文献
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